大阪 北区のビルに入るクリニックが放火され、巻き込まれた25人が死亡した事件で、現場から見つかった容疑者のスマートフォンを警察が解析したところ、「史上最悪の凶悪事件」などのキーワードで検索した履歴が残っていたことがわかりました。
警察は、過去に多くの人が犠牲になった事件を調べるなどして計画を進めていたとみて捜査しています。
先月17日、大阪 北区曽根崎新地のビルに入る心療内科のクリニックが放火された事件では、巻き込まれた25人が死亡、1人が重体になっているほか、警察が殺人と放火の疑いで捜査している谷本盛雄容疑者(当時61)が死亡しました。
警察が、現場の焼け跡から谷本容疑者のスマートフォンを見つけて解析したところ、「日本史上最悪の凶悪事件はどんな事件がありますか」などのキーワードで検索した履歴が残っていたことがわかりました。
ほかにも、過去の無差別殺人や放火殺人に関する大学などの研究機関の論文とみられるファイルをダウンロードしていたこともわかったということです。
警察は、谷本容疑者が過去に多くの人が犠牲になった事件を調べるなどして計画を進めていたとみて捜査しています。
容疑者のスマートフォン 検索履歴は
警察によりますと、容疑者がスマートフォンにダウンロードしていたのは、タイトルに「大量殺傷」「放火殺人」などのキーワードがある大学などの研究機関の論文とみられ、過去に起きた無差別殺人や放火殺人事件の犯人の行動パターン、犯行手段や動機などについて考察しています。
中には14年前に東京 秋葉原で起きた通り魔殺人事件など、具体的な事例を紹介しながら犯人の計画性などについて記述するものがありました。
またスマートフォンの解析では、
▽3年前、京都アニメーションで起きた放火殺人事件
▽118人の死者を出した1972年の大阪の千日デパートのビル火災
▽2003年に韓国 テグ(大邱)の地下鉄で192人が死亡した放火事件
について検索した履歴が残っていました。
このほか、「日本史上最悪の凶悪事件」について、WEBサイト上の質問に回答するページなどについても検索の履歴があったということです。
専門家「犯罪抑止のための分析を」
犯罪精神医学が専門の聖マリアンナ医科大学の安藤久美子准教授は、容疑者が無差別殺傷事件などに関して検索していたとみられることについて、「今までの断片的な情報では容疑者の心情までは分からなかったが、ネット検索の履歴からは『どうせ死ぬなら人を巻き込んで死んでやろう』とか、社会や他人への当てつけのような印象を受ける。かなり追い込まれた状況で決断を引き止めるものもなく、数か月も前から準備していた様子から、どうしても失敗できないという決意を感じる」と話しています。
また、「今の社会はネット環境が発達し、自分の不遇な状況などを過去の事件の犯人に照らし合わせたとも考えられる」と述べました。
そのうえで、犯罪を抑止するためには、類似性がある事件の社会的背景などを分析し、対策につなげる必要があると指摘しています。